カーボンクレジット市場の現状と実測型ソリューションの未来 〜株式会社AmaterZが拓く畜産DX〜|イベントレポート
6月23日(火)かごゆいテラス(鹿児島県庁18階)にて、株式会社AmaterZによる、サービス体験会を実施しました。ソニー出身の代表取締役・矢島さんに登壇いただき、リアルタイムガスセンシング技術を活用した、畜産カーボンクレジット事業について御講演いただきました。環境負荷の実測から農家の経営改善まで、幅広い視点での事業展開を紹介してくださいました。

【イベント詳細】
カーボンクレジット市場の現状と実測型ソリューションの未来 〜センサー・AI・ロジックで畜産を変える〜
日時:2026年6月23日(火)18:00~20:00
会場:かごゆいテラス
(鹿児島市鴨池新町10-1 鹿児島県庁 18階)
登壇者:株式会社AmaterZ 代表取締役 矢島 正一
【当日の様子】
⚪︎カーボンクレジットとAmaterZのアプローチ

矢島さんから、ソニー在籍時代の経験から畜産業への想いまで、起業の背景が語られました。ソニーで15年間、半導体技術者として新規事業開発に携わった矢島さんは、北海道の酪農家60軒を訪問した際、「畜産農家がテクノロジーから取り残されている」という現場の課題を痛感。牛の発情発見センサー開発経験を経て、2024年10月に鹿児島県へ移住し、事業を展開しています。
AmaterZが取り組むのは、カーボンクレジット市場における「推定値」から「実測値」への転換です。従来の畜産クレジット発行は、特定の登録飼料を使用した場合の「推定削減量」に基づいていましたが、これでは畜産農家独自の低炭素化施策(残渣のアップサイクル利用など)の成果がクレジット化できないという課題がありました。AmaterZのソリューションは、動物の居住空間、CO2・メタン・アンモニア等の大気組成をリアルタイムで直接測定し、実測データに基づいたクレジット発行を実現するものです。
⚪︎リアルタイムガスセンシング技術の価値

矢島さんが強調したのは、「実測」がもたらす3つのメリットです。
第一に、クレジット発行期間の短縮です。従来は準備から3年かかっていたカーボンクレジット発行を、AmaterZはJA鹿児島県経済連との実証で、7ヶ月に短縮しました。これは、大気組成をリアルタイムで取得できるため、気候変動の影響を補正し、年間を通じた温室効果ガスの削減効果を高い精度で評価できるためです。
第二に、削減量の最大化です。カタログ値では10%の削減と言われていた飼料の効果が、実測では30%以上の削減効果が確認されました。特に注目すべきは、呼気由来のメタンだけでなく、糞尿由来のアンモニアから発生する
N₂O(メタンの10倍以上の温室効果ガス)についても削減量として評価できるようになった点です。
第三に、グリーンウォッシュの回避です。推定値に基づくクレジットが後に不正確と判明すれば、発行済みクレジットが白紙化されるリスクがあります。実測データは、農家やブランドのリスク軽減につながります。
⚪︎農家にとっての真のメリット:経営改善とDX

クレジット収益が農家へもたらすのは、単なる一時的な収入ではなく、「DX(データ経営)への移行」という本質的な価値です。
ブロイラー農家の事例では、アンモニア濃度の可視化に基づく換気指導により、致死率が10%程度低下しました。また、ある例では、昼間は臭くないが夜間にアンモニア濃度が急上昇する問題(ブレーカーでファンが停止していることが原因)など、農家が気付かない環境管理の課題も特定できます。
矢島さんは、「データ活用環境を整え、勘と経験に頼る経営から脱却すること。これが農家にとっての真のメリット」と述べました。
今後、低炭素活動が習慣化し、将来的には温室効果ガス削減への対応がより強く求められる中で、早期にデータ経営にシフトしている農家が高い競争力を持つことになるでしょう。

⚪︎参加者からの声・交流会
セミナーを通じて実感できたのは、カーボンクレジットが単なる「環境配慮」ではなく、農業経営の根本的な改革を牽引する力を持つということでした。参加者アンケートには「新たな動きを知ることができた」など、高い評価が寄せられました。

ご登壇いただいた矢島さん、そして足を運んでいただいた参加者の皆様、ありがとうございました!